続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

豆本ワークショップ in 宮前小学校 2018春

 先日、目黒区の宮前小学校で、豆本とお話作りのワークショップを開きました。
 小学校に行く前には、コーヒーを飲みながらゴミ箱を折ります。もはやルーティーンとなった作業。

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 今回、1クラスめは18人、2クラスめは9人の参加者がいました。どちらも低学年が多かったです。
 宮前小学校でのワークショップは何度目でしょう?「豆本、作ったことある人は?」と聞いてみると、どちらのクラスも半数の手が上がりました。ワークショップの内容は1度変えましたが、また変える必要がありますね。参加する子どもたちに、毎回同じことをさせるわけにはいかないです。むむむ。

 早く来た子たちのお楽しみ。見本の豆本読書タイム。

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 さて、時間となりまして、まずは簡単な折り豆本作り。これは毎回変わらない工程。
 簡単なはずなのですが……今回、低学年が多かったせいか、のりを塗る場所を間違える子が多かったです。「ここに塗ると、ただのちっちゃいメモ帳になっちゃうからね」「ここに塗ると、開かない本になっちゃうよ」と、事前に言ったのですが……。次回からは、ちょっと時間かかっても、ひとりひとりに「ここに塗って」と示したほうがよさそうです。

 折り豆本作りがひと段落して、次はセミ・オリジナルの豆本作り。絵のみがプリントされている用紙に、自分で考えたストーリーを添え、色鉛筆で絵を描き加えます。
 まずは下書き用の用紙に、鉛筆で書き込み。

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 ストーリーとしては、散歩に行く、友達に会いに行く、というものが多いのですが、今回、ちょっと珍しいお話が飛び出しました。主人公は大量殺人を犯している殺人鬼で、新たな殺人計画を思いついたという、恐ろしいストーリーです。自分の部屋には、山積みになったドクロがあるのですが、そこから亡霊が現れて、主人公を追いかけてくるという展開。
 こんなお話、今まで出てこなかったなー。

 下書きができたら、色鉛筆を使って本番。やはり、色が入ると、ぐっとかわいくなりますね。
 中には100色くらいある色鉛筆セットを持って来た子もいました。

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 お話がまったく書けない子もいます。「ぜんぜん思いつかない」と、すっかり飽きてしまったようす。「お話を書かなくてもいいんだよ。文章書くページに、絵を描いたり、色を塗ったりして、字のない絵本にしたっていいんだよ」と言ってみたところ、息を吹き返してくれました。「ここ、青にすればよかったな」という反省の声も聞こえました。最初は適当に塗っただけだったのでしょうが、後から「色によるストーリー展開」が、彼の頭の中に浮かんだのでしょうね。おもしろいです。

 孤高の5年生。

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 すでに数回、このワークショップに参加している子です。もう手順は頭に入っていることでしょう。ですが、こちらの説明は必ずしっかり聞いてから作業を始めます。「きれいに仕上げる!」という意気込みが伝わってきます。

 低学年の男の子の中には、はしゃぐことに熱中してしまう子が、やはり出てきますね。真剣に作業をしている子から「うるさい!」と何度も怒られていました。私も「集中している子の邪魔になるから、さわいじゃダメだよ」と言うのですが、3分ともちません。口ぐせは「意味わかんねぇ!」。
「なんでここ折るの? 意味わかんねぇ!」「なんでこっちにのり塗るの? 意味わかんねぇ!」
 最初、その都度意味を説明してあげたのですが、理解を求めてるわけじゃないんですね。「意味わかんねぇ!」が言いたいだけでした(苦笑)。
 この子は結局、最後まで仕上げることはできませんでした。それ自体は珍しいことではありません。90分という時間内で、すべての作業を終えることは、なかなか難しいのです。なので、作り方の手順を、写真入りで説明したプリントを配ります。これを見れば自宅で仕上げることもできますし、完全オリジナルの豆本を作る手助けにもなるでしょう。

「意味わかんねぇ!」の子から、最後にとても悲しい言葉が飛び出しました。最後まで仕上げられなかった本番用用紙を「捨てていく」と言ったのです。「それはダメだよ」と言うと「ダメじゃない!」と言い返す。
 うーん……もし本当に捨てていくとなると、このワークショップの時間は、まったくのムダだったということになります。ムダなだけでなく、この子は大はしゃぎして周りに迷惑をかけています。結果がマイナスというのは、あまりに悲しい。
 観察すると、この子は本当に捨てるつもりではないようです。こちらの気を引くためのセリフのようでした。深い考えは何もなく、「意味わかんねぇ!」同様、反抗によって気を引くことが身についているようです。
 やはり、言葉は人を傷つける力を持っているということを、きちんと諭してあげるべきだったかなぁ。たとえその場では意味がわからなくても、いずれ自分の意識と結びつくかもしれない。
「小学校でのワークショップ」は、普通のワークショップとちょっと違います。それは、回りが友だちや知った顔ばかりという環境だということ。はしゃぎやすい環境なわけです。回りが知らない子ばかりだと、おそらくこの子も騒がないでしょう。
 しかし、こうした環境だからこそ教えられることもあるわけで、私はそのチャンスを活かせていない。今後の、大きな課題です。
 コルクンとうなぎの串焼きで一杯やりながら反省しました。

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