続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

ヒースランドと私 4 vol.9~vol.12

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 とっても残念なことに、'98年秋発行のvol.9だけ、手許にありません。誰かに貸したのか、引っ越しの際にどこかにまぎれてなくなってしまったのか……。童話仲間の中山麻子さんがちゃんと持っていたので、表紙の写真を送ってもらいました。
 もっと残念なことに、私はこの号に掲載したお話を覚えておりません(汗)。
『温かい手』という、恋人の手を温める青年のお話だと、中山さんに教えてもらいました。最後は「編み物を教えて」と言うらしいです。おそらく、彼女のほうのセリフでしょう。
 これだけのことを教えてもらって、まだ思い出せないというのは、残念と言うより、ショックです……。

 気を取り直して、'99年春発行のvol.10。『猫は伝える』というお話を載せています。
 アパートの部屋にちょいちょい遊びにくる野良猫・シロ。どうやら、複数の人にかわいがられているらしい。ある日、手紙を結びつけた首輪をしてきた。「私は『ユキ』と呼んでいます。あなたは?」という内容の、短い手紙。なにをやってもうまくいかず腐っていた青年が、猫を通しての手紙のやりとりで、元気になっていくストーリー。
 このお話は、当時J-waveで放送していたラジオ番組『GROOVE LINE』で、DJのピストン西沢さんが話していた「近所でかわいがっている野良猫に手紙つけたら、返事がきた」というエピソードを元に思いつきました。「シロ」は、私が実家にいたころにかわいがっていた野良猫。川に落ちてしまったところを助けたら、なついてくれました。
 作品集『トゲなしサボテン』(愛育社)に収録。本が出版されたとき、ピストン西沢さんに渡そうと、渋谷のHMVスタジオ前まで行ったのですが、勇気が出ず、目の前を通り過ぎるピストンさんを見送っただけとなりました~。

 '99年秋発行のvol.11には『虹と五十円玉』を掲載。
 家の近くを流れる川の土手の上は、菜々美の特等席。大きな虹が架かったある日、特等席には青年がビニールシートを広げていた。小物を並べて、どうやら商売をしているらしい。どれも菜々美好みのかわいいものばかり。けれどポケットには50円玉が1枚きり。50円で買えるものは、とっても小さな水晶の結晶。けれど、日の光を通すと、掌に小さな虹を落とすことができる。
 このお話は、豆本作りのワークショップの際、指慣らしを兼ねて作る折り本のテキストに使っています。

 '00年春発行のvol.12には『梅を見る人』を掲載。
 古アパート・松竹荘の裏には、梅林がある。淑子の部屋はちょうど梅林の中央の位置にあり、東が紅梅、西が白梅といった具合に、梅の紅白試合を見る審判のような気分。梅林を管理するのは、大家でもあるおばあさん・梅森トシ。トシの話によれば、ここの梅は、毎年少しずつ、紅梅、白梅の場所が入れ替わる。完全に入れ替わるには16年かかり、さらに16年かけて元の位置に戻る。この32年を「梅暦ひとつ」と数えると言う。「梅森」は「梅守り」であり、梅暦を数えるのが役目。本当かウソかわからないこの言い伝えを守り続けているトシの話を、緑茶を飲みながら、のんびりとわくわくしながら聞くお話。
 作品集『トゲなしサボテン』に収録されています。


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