続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

ヒースランドと私 3 vol.5~vol.8と塾生作品集編

 '96年秋発行のvol.5。この号から表紙の絵が、門田俊明さんから、安田隆弘さんに代わります。そして、表紙のデザイン、目次と「2色ストーリー」のレイアウトを私がまかされました。専門学校でレイアウトの指定や校正を学んだので、お鉢が回ってきました。学んだとは言え素人同然なので、印刷所の方々には、ずいぶん骨折りをしてもらったと思います。

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 vol.5には、私は『雨の日のネコ畑』というお話を載せています。一見キャベツ畑なのですが、キャベツの玉の中には、子ネコが眠っている、というお話です。畑の隅には「この畑から東京の各地に、新鮮な野菜とかわいいネコが出荷されています」なんて立札があります。
 このお話は大幅に書き直し、電子書籍『夜風のウィンディア ~九十九耕一短編集3~』に収録されています。
 作家インタビューのコーナーは、山下明生さんでした。

 vol.6は'97年春発行。『夢の実ひとつ』というお話を掲載。花屋さんで買ったクリスマスホーリーの赤い実を、夜な夜なひとつだけもらいにくるパジャマ姿の少女・未来(ミキ)。この実を枕元に置いて寝ると、夢が少しだけ叶うという。じつは彼女は、近くの病院に入院しており、余命いくばくもない状態。生霊として夢の実をもらいに来ているのだという。少しも怖くない霊。未来の夢とは?
 このお話を書いたときは「延命治療ってどうなのかな?」ということを考えていました。考え方は人それぞれですが、もしも私自身がそうした状況に陥った場合、延命治療は望まないと思います。
 このお話は、作品集『トゲなしサボテン』(愛育社)に収録されています。
 作家インタビューは岩崎京子さん。

 '97年秋発行のvol.7では、なんと「九十九耕一特集」を組んでいただけました。この号には3本のお話を載せています。

『ミューズのペン』は、このときの私の決意表明のようなお話です。童話を書いているけれど、自分の力に行き詰まりを感じている青年の前にミューズ(芸術の女神)が現れ、1本のペンを渡します。このペンで書いたお話は、たちまちベストセラー。けれど、青年の意中の人は、見向きもしない。青年はある日ペンを置き、自らの力のみで、一所懸命、1本のお話を書き上げます。それを読んだ彼女は……。
 作品集『トゲなしサボテン』に収録。

『ラーメン食べたい』は、ラーメンが食べたいパンダのヌイグルミのお話。同居人のノッコちゃんに話しかけたいけれど、ヌイグルミはしゃべることも、動くこともできない。けれどある日奇跡が起こり、しゃべれるようになるのだけれど……。
 かわいくて、切ないお話。作品集『トゲなしサボテン』に収録。電子書籍ラーメン食べたい ~九十九耕一短編集2~』にも。電子書籍版の表紙に写っているパンダのヌイグルミは、実際に我が家にいる、お話のモデルになったヌイグルミです。
 ラジオ「青山二丁目劇場」で、ラジオドラマにもしていただきました。

『天使の微笑み』は、雪でワインを冷やして飲むカップルのお話。彼女の方が作家という設定で、雪を眺めながら「季節は天使が運んでくる。温もりを春に天使が持ってきて、最高に温まった状態が夏。だんだん冷めていき、秋になり、冬が来る。新たな温もりを求めて飛び立つとき、散った羽根が、地上では雪になる」」と語ります。
 作品集『トゲなしサボテン』には『天使のほほ笑み』と改題して収録。

 この号で作家インタビューは最終回。最後を飾ったのは、もちろん、立原えりか先生です。

 vol.8は'98年春発行。この号から、グラビアページのレイアウトも担当することになりました。
『大臣のユウウツ』を掲載。発明好きの、のんきな王様が治める国では、大臣がとっても苦労します。
「王様のアイデア」という雑貨屋さんの名前から思いついたお話です。作品集『トゲなしサボテン』に収録。電子書籍トゲなしサボテン ~九十九耕一短編集1~』にも入ってます。

 さて、この4冊が発行される間に、2冊の「塾生作品集」が発行されました。

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『立原えりかの童話塾・塾生作品集② あなたとわたしの動物園』では、動物が登場するお話を集めました。'95年発行。ここには『にゃおの鳴き声』というお話を書いています。仕事の都合で遠方引っ越す彼と、引っ越しの手伝いをする彼女。そんなふたりを、不機嫌そうに見つめる猫・にゃお。ご近所さんとこの猫だけれど、毎日遊びに来ていた猫。引っ越し当日は雨になったけれど、濡れながら、もう開けてもらえないドアを見つめるにゃおの姿。
 私の先生が引っ越しをするときに、実際に見た光景をもとに書きました。

『立原えりかの童話塾・塾生作品集③ それぞれの心に咲く花』は、とくに制約を設けず、塾生の作品を集めたものです。'97年発行。表紙デザインは私が担当しました。
『オンボロバスの歌』を掲載。間もなく廃線となる路線バスの中で知り合った運転手さんとおばあさんの、あたたかいお話。バスの中で、車内放送用のマイクを使って歌います。
 作品集『トゲなしサボテン』に収録。電子書籍ラーメン食べたい ~九十九耕一短編集2~』にも入っています。

 ちなみに『立原えりかの童話塾・塾生作品集①』は'93年に発行されたようです。ちょうど私が携わってないときでした。残念!


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