続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

「ヒースランド」と私 2 vol.1~vol.4編

「海賊」vol.7が発行される半年ほど前でしょうか。池袋の童話教室に通う生徒に、大きな宿題が出されました。
「第11回 アンデルセンのメルヘン大賞」に応募すること。
 池袋の教室は、今思えば、レベルの高い教室でした。童話賞受賞経験者も、ふたりくらいいました。その中で半年以上揉まれたのですから、必然、生徒の文章力、構成力も上がっています。私にとっては初めての応募、力が入ります。
アンデルセンのメルヘン大賞」は、ちょっと風変わりな賞かと思います。パン屋さんのタカキベーカリー主催の賞です。当時は、大賞1作、優秀賞4作に、プロのイラストレーターが絵をつけ、1冊の本にしてもらえます。審査委員長は、立原えりか先生。
「自分のところの生徒を、エコヒイキできるじゃん」と思う方もいるでしょうが、さにあらず。仮にエコヒイキしたとしても、それは一次審査まで。一次審査では、5人のイラストレーターに振り分けられる50~60作品が選ばれます。イラストレーターは、自分の許に届いた作品の中から、最も絵をつけたいと思う作品を選びます。これで大賞・優秀賞が決まる仕組みなのです。
 私はこのとき『トゲなしサボテン』というお話を書き、大賞・優秀賞には届きませんでしたが、「入賞」をいただきました。「佳作」にあたる賞ですね。
 この「入賞」には10名が選ばれるのですが、なんと池袋の教室から4名もの受賞者が! みんな「次こそは!」と闘志を燃やしました。

 前置きが長くなりました。こんな話をしたのは、池袋童話教室の受賞者たちの作品が、「ヒースランド vol.1」に掲載されたからです。
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 vol.1は'94年の10月に発行となっています。「海賊」もそうでしたが、このころの「ヒースランド」は春と秋の、年2回発行でした。
 記念すべき「ヒースランド」初号、そこに、佳作とは言え、受賞作が載るのは、誇らしい気持ちでした。しかも、4人の受賞者といっしょのインタビュー記事まで掲載されました。
 この号から私のお話は「九十九耕一」のペンネームで掲載されます。
『トゲなしサボテン』は、後に愛育社から刊行された作品集の表題にもなっており、現在ではマイナビから電子書籍としても発行されています。楽天koboAmazon kindleでご購入いただけます。電子書籍では、『トゲなしサボテン』のほか、『さん・ちょっと・クッキー』『大臣のユウウツ』が収録されています。

books.rakuten.co.jp

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 また、会員制サイト「ストーリーゲート」でも、カメラマン・ミヤジシンゴさんの写真とともに、音楽、ナレーションを付けて作品化されています。

Web絵本 ストーリーゲート|童話落語260作品読み聞かせ


 vol.2からvol.7までは、作家インタビューが掲載されています。豪華ですね~。
 '95年春発行のvol.2には、神沢利子さんのインタビュー記事が掲載。
 私は『ひきたてコーヒーの店』というお話を書いています。愛育社の作品集『トゲなしサボテン』にも収録されているお話です。ひらがなで「ひきたて」としたところがポイントのお話です。

 vol.3は'95年秋に発行。インタビューコーナーでは木暮正夫さんが登場。
 私は『ねんどの人』というお話を書いています。このお話、私の中では同性愛者差別に対する反省をもとに書いています。子供のころ「ホモ」「オカマ」と、あまりにも気軽に悪口、冷やかしの言葉として使っていました。それは間違いであるということを、自分の胸に刻もうという思いで書いたお話です。ぜんぜんそうは見えないかもしれませんが……。
 また、「お話の中にお話を入れる」という、自分にとって新しい手法を試してみたかったという思いもあります。

 vol.4('96年春発行)では、西本鶏介さんのインタビュー記事が掲載。
『小窓』というお話を、私は書いています。以前、某通信教育の国語のテキスト作りに関わっていたことがあるのですが、そのときに書いたお話をベースに書いています。
 宝石店のショウウインドウが主役という、変わったお話です。O・ヘンリーの影響もあって、ちょっと皮肉な結末になっています。
 ちなみに、某通信教育のテキストでは「ショウウインドウが主人公じゃ、子どもにわかりづらい」ということで、ボツになりました~。

 


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