続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

そばセットの作法

 三たて(挽きたて、打ちたて、茹でたて)をうたっているようなお店ではなく、駅前とかにある感じの、立ち食いそば屋風なお店には、たいてい「そばセット」がある。もちろん、うどんセットもあるでしょう。でも、私が注文するなら、そばセットなのであります。しかも、「かけ」か「もり」かが選べた場合、きっと「かけ」を選ぶでしょう。
 たいてい、こうしたお店のそばは、コシがない。私はそばが好きで、通常「もり」で食べる。「ざる」ではなく、海苔の乗ってない「もり」がいい。海苔はどうも、ぞっとすするのに邪魔なんですよ。そばがおいしければ、ネギもいらない。当然、コシのないそばは嫌なんです。
 でもね、立ち食いそば屋ではコシは求めない。「ああ、そうそう、こういう感じ!」という、郷愁の念のようなものを大事にしたいと思うのであります。

 さて、セットの内容ですが、三種類くらいから選べるのが普通かな? ときには十種類以上のセットメニューが並ぶお店もある。そばと丼ものがセットになっているわけだけれど、そばが「ミニ」になっている場合もあれば、丼ものが「ミニ」の場合もある。
 いずれにせよ、そばは決定なのだから、相方選びが重要な問題なのです。
 私の場合、たいてい「かき揚げ丼」に落ち着く。七割はかき揚げ丼になっていると思う。カツ丼、カレーにも惹かれるけれど(牛丼には、なぜか惹かれない)、どうしてもかき揚げ丼に落ち着く。店によっては油のキレが悪いかき揚げが乗っていて、口の中がニチャニチャすることがあり、そんなときはとてもガッカリする。そんなリスクを抱えているにも関わらず、かき揚げ丼なんです。
 しかしここに「イカ天丼」があった場合、状況は難しくなってくる。イカ天丼の場合も、衣がやけに大きくて、身は全体の三割くらいの場合があり、これもとてもガッカリする。なんでそういうリスクのあるものに惹かれるのかなぁ?

 今回は思い切ってカレーライスとのセットにしてみた。私としては「意を決して」の注文だった。
 とは言え、そば屋のカレーには惹かれるものがある。もっちりとしたルウが、無性に恋しくなることがある。小麦粉の分量が多くて、最早「黄色」になっているようなカレー! そういうカレーが食べたくなることはありませんか?

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 今回は黄色いカレーではなかったけれど、まあいいでしょう。
 さて、食べ方としては、これはそばの相方がカレーでもかき揚げ丼でも同じだけれど、まず、七味を振ったそばを食べてしまいます。ただし麺のみ。
 これは「麺がのびるから」と言うより「のびるような気がするから」であります。もともとコシを求めていない麺なので「今さらのびたところで」とも思う。でも、じっと汁に浸かっている麺を脇に、ご飯ものを食べるのは落ち着かない。ご飯ものには「あとで必ず!」と誓い、そばをすする。麺がなくなったら、落ち着いてご飯ものにとりかかる。このとき、そばで待たせた分、汁はよりご飯に協力的になってくれるわけです。飯、飯、汁。飯、飯、飯、汁。といった具合に、ご飯ものをアシストしてくれるのです。そばの相方が油切れの悪いかき揚げ丼だった場合などは、口内の油を洗い流してくれる、強い味方!

 ところで、カレーには福神漬けが添えてある。着色料で真っ赤な場合が多い。この真っ赤な福神漬け、好きじゃありません。では、脇にどけるのか? 食べないのか? というと、そうではない。ないとサビシーんですな。なので、最初のひと口で、カレーに混ぜて終わらせてしまう。
 これでひと安心となるわけだけれど、それはカレー単品の場合。そばセットだと小皿の漬物が添えられてくる。これも好みの味じゃないんですよー。なのでこちらは、そばを三口くらい啜ったところで、バリボリバリッと終わらせる。
 苦手なものは早めに。麺は早めに。
 これぞ、そばセットの作法なのです。


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