『ピノッキオ』
本日(12月14日)、ストーリーゲートにおきまして、『ピノッキオ 第一話 五枚の金貨』が無料公開。
この作品には、とても感謝している。
『握りばさみ』というお話で、JOMO童話賞優秀賞をいただいた。けれど、私はこのお話を書いたことで、大きな壁に当たった。
主人公は、小学生の女の子。とてもいい子だ。この「いい子」が問題だった。大人が求める、いわゆる「いい子」になっている気がしてならない。子供のことを、心から「いい子だな」と思うときというのは、こんな、大人が思い描くような場面ではない。もっと生き生きといろんなパワーが溢れている感じ。大人たちが手を焼くようで、それでもなお、最後には笑顔にさせられてしまうような感じ。
そんな子供を書けないだろうかと悩んでいたときに、「『ピノッキオ』のリライトをしませんか?」という依頼が来た。なんというタイミングだろう!
ピノッキオときたら、大人の思うようになんか、これっぽっちも動いてくれない。ぜんんぜん操れない操り人形なのだ。なにしろ、ピノッキオ本人ですら自分を操れないのだから。
『ピノッキオ』を何度も読み返し、自分の中で再構築する。ジェッペットじいさんがしたように、胸の中で、丸太からピノッキオを彫り出す。あばれること、あばれること! それでも「なんていい子なんだろう」と思えてくる。
乗り越えても乗り越えても、また新しい壁は現れる。「あれ? この壁は前に乗り越えたはずでは?」と思うこともある。そんなときには「自分はなにも成長していない」と落ち込むけれど、たぶんやっぱり、少しずつ成長していると思う。
同じように見えても、たぶんそれは違う壁なんだろうなぁ。
本間希代子さんに絵をつけてもらえたのも嬉しかった。彼女とは、友人の紹介で知り合ったのだけれど、そのを見たときに痺れた。「この人とは、いつかいっしょに作品を作りたい!」と思った。『ピノッキオ』三部作で、その夢がかなった。そんな意味でも、思い入れのある作品だ。
ナレーションは小川範子さん。収録に立ち会ったので、お会いすることができた。ちょうど小川さんの誕生日だったと思う。たまたまピノッキオの顔をしたペン先を見つけたので、それを付けたペンと瓶入りインクをプレゼントした覚えがある。「わたし、インクを集めてるんです。このインクは持ってない」と、意外な喜ばれ方をした。
思い出話が長くなってしまった。
ぜひ、ご覧ください。
https://www.so-net.ne.jp/storygate/sakuhin/s239.html