続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

『メリー・ポピンズ リターンズ』

メリー・ポピンズ リターンズ』を観てきました。ネタバレがあるので「観るまで知りたくない!」という方は、読まないでくださいねー。

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 ジュリー・アンドリュース主演の『メリー・ポピンズ』が公開されたのは、1964年だそうです。私が初めて観たのはそれよりもずっと後。中学生のときに「金曜ロードショー」かなんかで観たのだと思います。あまりのおもしろさに、びっくりしました。素晴らしい歌声、目を見張るダンス、アニメと実写の融合、そしてストーリー!
 次のテレビ放送が巡ってきたときにはしっかり録画し、繰り返し観ました。回数は数えていないけれど、これまでに30回は観てるんじゃないかな?
ウォルト・ディズニーの約束』は、この『メリー・ポピンズ』が作られるまでの映画。エマ・トンプソンが原作者のトラヴァースを演じました。ウォルト・ディズニートム・ハンクス。映画化するための、原作者の説得がいかにたいへんだったか、原作者がなにを大切にしていたのか。こちらもいい映画でした。

 さて。その流れがあっての、今回の『メリー・ポピンズ リターンズ』。初めてあらすじを知ったとき、大きな不安がありました。バンクス夫人が、どうやら亡くなっている設定なのです。このときはてっきり、前作の続き、メリー・ポピンズが帰った直後からお話が始まるのかと思っていました。で、「バンクス夫人の死を、お涙頂戴に利用するような、安っぽいストーリーになるのでは?」と危惧したわけです。
 しかし、お話はメリーが帰ってから25年後から始まりました。ジェーンとマイケルは大人になっています。ジェーンは実家を出てひとり暮らし。マイケルが実家を引き継ぎ、3人の子どもたちと暮らしているのですが、前年、奥さんが病気のために他界。治療のために莫大なお金がかかっており、家を借金の担保にしていたため、差し押さえられそうに……。
 そんな状況の中で、子どもたち、特に上ふたりは「早く大人になって、お父さんを助けなきゃ」と思っています。前作のジェーンやマイケルのように乳母が逃げ出すようなわんぱくではなく、聞き分けのいい子どもたち。お手伝いも率先してやる。でもそれは、自分たちの「子ども時代」を差し出す覚悟の現れなのです。お母さんを亡くした傷だって癒えていないのに。
 こんな子どもたちを、メリー・ポピンズが放っておくわけないですよね?
 風に飛ばされる凧を追いかけ、兄姉とはぐれたことにも気づかない末っ子。空高く舞い上がってしまった凧を手に降りてきたのは……。
 メリー・ポピンズの登場に、ちょっと涙ぐんでしまいました。「帰ってきた!」という思いが込み上げてしまって。
 前作ではバートという煙突掃除夫(本業かどうかは不明)の青年が出ていましたが、今回はジャックというガス灯夫が登場。バートのこともよく知っていて、メリーとも面識があるようです。
 さて、バンクス家が暮らす家を差し押さえようとしているのは誰でしょう? なんと、前作でバンクス氏が働いていた銀行だったのです! 銀行は、ドース氏が会長に退き、ウィルキンズ氏が頭取になっていました。ウィルキンズは大恐慌をチャンスとばかりに、次々と人々から家を取り上げていたのでした。期限は5日!
「父が遺した、銀行の株があるはず! それを手放せば、家は守れる!」
 ジェーンは提案するのですが、株券が見つからない。銀行に相談しても、ウィルキンズは親切そうに取り繕いつつも「記録には残ってない」と。
 焦りから、子どもたちの気持ちに気づかなくなるマイケル。なんとかお父さんと家を守ろうとする子どもたち。
 メリー・ポピンズはそんな一家に、笑顔を取り戻させるために戻ってきたのです。
 宣伝で「上から目線の魔法使い」って言われていたけれど、「ひどいキャッチコピーだな」と思います。メリーは乳母だから、子どもたちを教育することも仕事で、ときには厳しい言い方をすることもあります。でも、それが上から目線? メリーの目線はいつだって、包み込む目線ですよ。
 話が逸れました。
 メリーは、どこか恋愛を諦めているジェーンも、ちゃんと見ていました。まあ、こちらはさほど手間はかからなかったみたい。
 もちろん、ラストは大団円。前作でバートと銀行頭取のドース氏を演じたディック・ヴァン・ダイクが、銀行の会長ドース・ジュニアとして登場! 92歳とは、とてもとても思えないダンスを披露。
 バンクス家を救ったのは、前作でマイケルが銀行に持っていった2ペンス。
 ストーリーを書くのは、ここまでにしておきましょう。

 今作も歌と踊りにあふれた映画でした。懸念していた「お母さんが亡くなってお涙頂戴」は、まったくの杞憂でした。よかった、よかった。
 メリー・ポピンズは、前作より少しキツい印象があったかも。
 前作を観ていなくても楽しめるとは思うけれど、観てない人は、観てからのほうがより楽しめるんじゃないかな? バンクス家の屋根裏には懐かしいものがあちこちにあるし、家政婦のエレンや、ご近所の提督、義足のスミスの話なんかも押さえておいたほうがいいでしょう。なにより、凧と2ペンス!
 音楽からも、懐かしさを掻き立てられます。メインの曲には使われていないけれど、バックミュージックとして前作の曲がアレンジされて流れています。昔ながらのファンの心をつかむよなー。

 私的に残念だったことがひとつ。それは「悪役」が出てきたこと。
 前作では、頭取のドース氏は、自分がマイケルの2ペンスを取り上げたことにより起こった取りつけ騒動の責任をバンクス氏ひとりに押しつけ、クビを言い渡します。バンクス氏は屈辱的な目に遭わされるのですが、「言いたいことはあるか?」と尋ねられ「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドゥーシャス!」と言って、自分を縛りつけていたものから解放されました。そしてドース氏はじめ、銀行重役たちに巻きついていた鎖も断ち切ったのです。登場人物も、観客も、みんながハッピーになる映画でした。
 でも今回、ハッピーになれなかった人がひとり出てしまったことが、私にはちょっと残念でした。
 とは言え、しっかり楽しませてもらいました~。


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