続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

ヒースランドと私 6 vol.17~vol.20

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 vol.17のグラビアには、ちょっと思い出があります。「市原ぞうの国」で撮影をしたのですが、私も連れて行ってもらいました。動物園で遠目にしか見たことのない象にニンジンをあげたり、なでたりできたことに、感激しました。園長の坂本小百合さんに立原えりか先生がインタビュー中、猫が私にずっとジャレついていたのも覚えています。猫好きの私には、じつに楽しい時間でした。
 この号には『マザーアンブレラ3 プラネタリウム』を載せています。真夜中の公園で、ペルセウス座流星群を見ようと、友だちと待ち合わせをしている男の子・ナオ。でも、1時間待っても、友だちは現れない。たとえ雨でも、約束したからには来なければならない──頑なにそう思うナオ。卵型遊具の天井部分にはふたつの穴が開いていて、そこに傘を開いて置けば、秘密基地の完成なのだけれど、片方の穴は塞がらないまま。涙をこらえるナオの前に、おばあさん登場。おばあさんの傘の内側は星空になっていて、小さなプラネタリウムのよう。

 vol.18には『トランクひとつの本屋』を掲載。
 花屋にシソの種を買いに行った青年。そこには「豆本の種」が売られていた。撒けば、育てている間に読んだ本が、豆本として収穫できると言う。興味をそそられた青年は種(豆)を買い、育ててみると、空豆のようなサヤが実り、中には小さな小さな本が! 友人の勧めもあり、収穫した本をトランクに詰めて、小さな小さな本屋さんを始めるお話。

 このころ私は豆本作りを始めました。私の作る豆本は「ドールハウスサイズ」と呼ばれる大きさで、25mm以下のものです。ドールハウスの本棚に収めてちょうどいい大きさってことですね。
 豆本のお話を豆本にしたら面白いんじゃないかと思い、書いたお話です。実際に豆本にして、「つくも堂まめ本舗」が参加するイベントなどで販売しています。

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 vol.19には、なんと漫画家の藤田和日郎さんのカットが載っています! 『うしおととら』、大好きです!
 藤田さん、わずかな間でしたが、池袋の童話教室に在籍していました。えりか先生からそのことを聞き、サインをいただけないかと『うしおととら』の1巻を持ってひさしぶりに教室に顔を出したのですが、残念ながらお休みで……。教室に来ていた方々はほとんどが女性ということもあり、藤田さんを知っている人が誰もいないという、私にとってはある意味、衝撃の空間でした(苦笑)。
 藤田さん、この後『月光条例』が連載スタートしたので、童話や昔話の取材の一環として来られていたのでしょうね。創作の教室だから、役に立ったかはわかりませんが……。
 しかし、スペシャルな「ヒースランド」になりました。

 この号には『蹄と握手』というお話を掲載。ある晩、サフォーク種の羊が、アパート暮らしの青年のもとに訪れて「執事として雇ってほしい」と言う。羊から話を聞くと、住むところがなくて困っているそうだ。かみあっているような、いないような、おかしな話し合いの末、執事と呼べるかははなはだ疑問だが、いっしょに暮らすことに。

 このお話は後に『あおば荘の羊』と改題しました。こちらも豆本にしたのですが、表紙に使われているサフォーク種羊の人形は、人形作家のコヤナギアイコさんに作っていただきました。なんと、本物のサフォーク種の羊毛を使用!
『あおば荘の羊』には続きがあります。『働く羊』『羊の歩く道』の2作。この2作を書くにあたっては、羊毛作家の新井ひでさんに「羊アドバイザー」として意見を聞きました。「羊三部作」として、豆本にしています。

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 vol.20から「日本通信教育連盟」が「ユーキャン」に改名。でも、目次ページ隅には「協力/日本通信教育連盟」と印刷されています。……私のミスです! すみません!!

 この号には『マザーアンブレラ4 つゆさきの国』を掲載。「つゆさき(露先)」とは、傘の骨の先に付いている、雨の雫をたらすための部品です。
 捨てられている傘から、つゆさきを取っている女の子。つゆさきが、トイレのマークの人物に見えることに気づいてから、つゆさきを集めていた。顔を描き、クッキー缶の中につゆさきの王国を作っているのだ。
 ある日、本屋で立ち読みするおばあさんの持つ傘のつゆさきのひとつが、星形になっているのを見つける。「つゆさきの国の王様だ!」そう思ってしまうと、どうしても欲しくなり、こっそりとカッターで切り外してしまう。逃げるように家に帰ったが、罪の意識に押しつぶされる。そこにおばあさんがやってくる。謝って、なぜこんなことをしたのかを話すと、おばあさんは「このつゆさきは王様じゃない。だって、あなたが女王様なんだもの」と、にっこり笑う。

「ヒースランド」に掲載した『マザーアンブレラ』シリーズは、これが最後です。でも、自分の中でお話は続いているので、いつかまとめられたらと思っています。


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