続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

老人介護施設に唖然

 母は60代前半から認知症を煩っている。若年性認知症だ。病院に連れて行ったのが早かったからか、進行はゆっくりな気がする。
 とは言え、最初はひとりでなんとか電車に乗れたのが、今では今日が何月何日なのかもわからない。昨年から3度、行方不明になり、警察に捜索願いを出した。
 そういう状態なので、週に3日、近所の施設のデイサービスを利用している。ときどき、ショートステイも利用している。
 先日、3泊4日という、ちょっと長めのショートステイをお願いした。ところが、2泊が終わった朝、ケアマネージャーから電話があった。「2日間、まったく寝ていない」とのこと。ふらふらになって歩き回っているというではないか。心配なのだが、仕事が終わるまで迎えに行けない。夜10時ごろ、1泊切り上げ、引き取ってきた。
 母は、家では、夜はちゃんと寝る。ショートステイという慣れない環境に入ると眠れず、他の利用者の部屋から衣類などを持ち出してしまったり、施設内を歩き回ったりするようだ。それでも今までのショートステイは1泊だったので、とくに問題視されてはいなかった。
 今月もいろいろ事情があり、2泊のショートステイを申し込んだところ……。
 2日間眠らなかったことが、施設の看護師には大問題だったらしい。ケアマネージャーを通し「Y病院の精神科で受診するように.とんぷくなどの睡眠剤を処方してもらうように」と言われた。地元では有名な精神病院なのだが、認知症の専門医は週に1度、月曜の午後にしかいない。私にとって、最悪に都合の悪い時間帯だ。それに睡眠剤は、うまく使ってる人もいるけれど、使い方がわりと難しいとも聞く。薬を飲んで朦朧としながら歩き、転倒、大腿骨骨折、寝付いたた肺炎、死亡という流れが多数あるみたいだ。なので、自宅ではちゃんと眠っている今、ショートステイのために飲ませたくない。
 2年前にも、この病院で専門医に診てもらい「今、通院されている病院の処方はしっかりしてますよ」と言われた。通院している病院も専門医なので、当たり前と言えば当たり前の話だ。
 そのことを施設にも伝えたが「症状が変わってきているから受診するように。しなければショートステイの受け入れは難しい」と、半ば脅しのようなことを言われた。
 仕方なく仕事は休みを取り、受診。詳しく調べ、2時間かかった。
 診察結果としては「通院病院の処方はしっかりしている」と言われた。眠剤についても、こちらが使いたくないと言う前に「今の段階で使うのはいかがなものか?」と難色を示した。
 こうなれば施設としても「では、眠剤なしで対応してみます」となると思っていた。ところが、結果を伝えると「やはり眠剤無しでの受け入れは難しい」と言う。
 え? おかくが指定した病院の専門医の診断ですよ? そんな答えが返ってくるとは、私はなんのために仕事休んでY病院に行ったのかしら?
 そう言うとケアマネージャーは「眠剤を使わないのであれば、お母さんが寝付くまで付き添ってもらうなどの、家族の協力が必要だ」と言い出した。付き添えるくらいなら、初めからショートステイを申し込まないよね?
 なんだ、これ?
 これまでは、とても親切な人たちで「いつもお世話になっています」という気持ちだったけど、ひとつの問題が正体を暴いてしまったのかな。
 老人介護の仕事をしている友人がふたりいる。相談したところ、施設の対応に対して「ありえない!」と憤りを露わにした。やっぱり同業者が見ても、異常なことだったんだ。
 友人曰く「眠らない老人に対処するマニュアルはない。十人十色なので、常に探っている。おしゃべりをしながら眠るタイミングを見たり、歩き回るのなら部屋を職員ステーションのそばにして気をつけたり、添い寝したこともあったかな」「薬に頼るのは、スタッフの力不足の証明」などなど。
 結論として、とりあえず24日からのショートステイの際には、ごくごく弱い睡眠導入剤を処方してもらおうと思う。ただし、これが終わったら、高齢者包括支援センターに今回のことを話し、別の施設を紹介してもらう。友人が言うには「おかしな施設がある」という報告は、役所にとっても重要なのだそうだ。他の施設、ケアマネージャーの紹介もしてくれるし、おかしな施設に指導をすることもある。
 じつは31日にもショートステイを希望していたのだけれど、これは取りやめ。多少の無理はしても、もうこの施設に母は泊まらせない。
 老人介護施設を利用しているみなさん、「お世話になっているから」という遠慮があるのは、よくわかります。でも、おかしいと感じたら、相談できる窓口に行きましょう!


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