続・どんぐりも背くらべ

童話作家・九十九耕一のブログ

『月の人 なよたけのかぐや姫』

 本日(8/8)、ストーリーゲートで『月の人 なよたけのかぐや姫』が無料公開。ストーリーゲートで一番最初に手掛けた作品。
 ストーリーゲートはこちら。
https://www.so-net.ne.jp/storygate/

「なるべく原作『竹取物語』に忠実に」という注文だった。
竹取物語』はけっこう長いお話だ。なので、『月の人』は全7話に分かれている。第1話が『なよたけのかぐや姫』で、かぐや姫が成長し、5人の求婚者が現れ、無理難題を押し付けるところまで。
 私は昔から、この「難題を出してあきらめてもらう」という部分が、どうにも納得できなかった。当時の状況では、身分の高い人からの申し出は断れなかったのだろうけど。
 でも、もし、かぐや姫が無理難題をふっかけることを楽しんでいたとしたら?
 もともとかぐや姫は、月の世界でなにかの罪を犯し、地上に落とされた。つまり下界には、来たくて来たわけではない。
 そして、ラストシーンを読んでみるとわかるのだけれど、月の世界の人々は、下界の人々に対し、とても冷やかだ。かぐや姫でさえ「月の衣を纏うと、これまでの自分ではなくなってしまうから」と、着替える前におじいさん、おばあさん、帝とのお別れをしている。着替えた後は、見向きもしない。
 この点に注目し、かぐや姫には、地上で育った優しい顔と、月の人としての冷やかな顔を持たせた。無理難題を出したのは冷やかな方のかぐや姫だとしたら、私としては、とても納得がいくのです。

 とは言うものの、5人の求婚者のエピソードに寄せられる感想を見ると、「胸くそ悪い話だ」なんていうのもある。まあ、全財産を失ったり、不自由な体になったりした求婚者たちを笑うのだから、そんな感想もあるでしょう。
 でも、月を見て泣くかぐや姫の心情は、ただ別れがつらいというばかりではないんじゃないかな? 人を見下す天界人に戻りたくなかったのでは? 自分の中に、そのような面があることが、嫌で嫌でたまらなかったのでは?

 今度、ジブリ作品の『かぐや姫の物語』が公開される。高畑勲監督がどんなかぐや姫を描いてくれるのか、楽しみだなぁ。
http://kaguyahime-monogatari.jp/


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